SPRINT試験のサブグループ解析 :厳格な血圧コントロールは腎臓を保護しますか?

SPRINT試験サブ解析の結果の要約

私的背景

有名なSPRINT試験のサブ解析結果が出ていたので要約を。
何はともあれ、要約を。

■目次

問題の定式化

  • P : 心血管リスクが高い50歳以上の高血圧患者(登録時の推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2以上の6,662例を対象)
  • E : 目標収縮期血圧120mmHg未満の厳格降圧群
  • C : 目標収縮期血圧140mmHg未満の標準降圧群
  • O : CKD発症(eGFRが30%超の低下または60mL/分/1.73m2未満の低下と定義)

追跡期間 ➡ 平均3.26年間

追跡内容・方法 ➡ 両群の平均eGFRの差、CKD発症(eGFRが30%超の低下または60mL/分/1.73m2未満の低下と定義)、全死亡および心血管イベントの発生を3カ月ごとに調査

論文タイトル:Effects of Intensive Systolic Blood Pressure Control on Kidney and Cardiovascular Outcomes in Persons Without Kidney Disease: A Secondary Analysis of a Randomized Trial

Srinivasan Beddhu, MD; Michael V. Rocco, MD, MSCE; Robert Toto,et.al

Ann Intern Med. 2017 Sep 19;167(6):375-383. doi: 10.7326/M16-2966. Epub 2017 Sep 5.

PMID: 28869987 DOI: 10.7326/M16-2966

全文リンク

背景

重度の収縮期血圧(SBP)低下を伴う慢性腎臓病(CKD)の報告された高い発生率の公衆衛生の意義は不明である。

目的

SBP低下が腎臓および心血管のアウトカムに及ぼす影響を調べ、その明らかな有益性および副作用を対照すること。

設計

SPRINT(収縮期血圧介入試験)のサブグループ分析。(ClinicalTrials.gov:NCT01206062)

➡ Subgroup analyses of SPRINT (Systolic Blood Pressure Intervention Trial).

設定

高血圧および心血管リスクの上昇した成人

参加者

ベースライン6662人の参加者は、糸球体濾過率(eGFR)のベースライン推定値が少なくとも60 mL /分/ 1.73㎡であった

介入

厳格降圧または標準降圧へのランダム化で、目標値は 収縮期血圧(SBP)で厳格降圧群が120、標準降圧群が140 mm Hg以下に設定

測定値

(線形混合効果モデルで推定された)フォローアップ中の平均eGFRの差、所定の事象CKD(eGFRが> 60mL /分/1.7㎡未満で> 30%減少すると定義される)、および全死亡または心血管イベントを引き起こし、3ヶ月ごとにサーベイランスを行う。

結果

厳格降圧群は標準降圧群に比べeGFRの低下が大きく、E群とC群との間の調整された平均eGFRの差は、6ヶ月で-3.32mL /分/1.73㎡(95%CI -3.90〜-2.74mL /分/1.73㎡)であり、18カ月時点で-4.50mL /分/1.73㎡(95%CI -5.16〜-3.85mL /分/1.73㎡)であり、その後も比較的安定したままであった。

追跡3年時点のCKDイベントは、ハザード比 3.54人(95%CI 2.50〜5.02)で、厳格降圧群の参加者の3.7%、標準降圧群の1.0%に発生した。NNH=38

対応する追跡3年時点の全死亡と心血管イベントの複合発生率は、厳格降圧群の参加者で4.9%、標準降圧群で7.1%であり、ハザード比は0.71(95%CI 0.59-0.86)、NNT=45であった。

制限

長期的なデータは不足していた。

結論

厳格な収縮期血圧(SBP)の降圧によりCKD発症リスクは高まるものの、相対的には全死亡と心血管イベント減少のベネフィットが(CKD発症リスクが高まるというマイナス)上回るとした。

感想など

SPRINT試験が治療法として、

血圧は診察室で5分安静後,自動血圧計(Omron Healthcare Model 907)を用いて座位にて3回測定した平均値を採用。受診は月1回×3か月,以後は3か月ごと。
主要クラスの降圧薬すべてを試験薬に含めたが,それ以外の薬剤も投与可とした。サイアザイド類似薬(第一選択薬として推奨),ループ利尿薬(進行CKD患者),β遮断薬(冠動脈疾患患者)など,CVD抑制のエビデンスのある薬剤の使用を推奨。サイアザイド類似薬はchlorthalidone,Ca拮抗薬はamlodipineを第一選択薬として推奨。

http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2005525.htmlより引用

としており、サイアザイド類似薬を使用していることがわかっていました。

有害事象としては

厳格降圧群は重篤な有害事象のうち低血圧(2.4% vs 1.4%, p=0.001),失神(2.3% vs 1.7%;p=0.05),電解質異常(3.1% vs 2.3%, p=0.02),急性腎障害・腎不全(4.1% vs 2.5%, p<0.001)が多かったが,

傷害を伴う転倒(2.2% vs 2.3%),徐脈(1.9% vs 1.6%)は同等であった。

起立性低血圧は厳格降圧群のほうが少なかった(16.6% vs 18.3%;p=0.01)。

http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2005525.htmlより引用

が既に分かっていたものです。

厳格な血圧コントロールをするにあたっての使用する薬剤が異なっていれば、今回の結果は異なっていたのかなぁと思います。

例えばARB+CCBで厳格コントロールをしていたら?などと考えてしまう。

今後こういったデザインの論文を探しつつ、このエビデンスを吟味出来たら面白いかもしれないと思っています。

けいしゅけ

今回の記事はいかがでしたか? アナタのお役に立てていれば幸いです!

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