私的背景
HPVワクチンについてのTwitter投稿を見ない日はありませんし、3児の父である身としては息子と娘たちの将来を見据えて学んでおきたいので論文を読み漁っています。
今回は男性不妊とヒトパピローマウイルスの関連について。
将来的には男児もHPVワクチンを打つのが当たり前になる可能性はあるのか、興味がそそられます。
論文タイトル:Human papillomavirus in semen and the risk for male infertility: a systematic review and meta-analysis
BMC Infect Dis。2017年11月9日、17(1):714頁)。doi:10.1186 / s12879-017-2812-z。
PMID: 29121862 DOI: 10.1186 / s12879-017-2812-z
背景
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、最も一般的な性感染ウイルスの1つである。
精液中のHPV有病率のエビデンスが増加しているにもかかわらず、精液中のHPV型の世界的分布および男性不妊症の危険性は決定的ではない。
方法
1990年1月から2016年12月までの間に実施された英語の研究では、精液中のHPV DNA有病率を報告した4つの電子データベースが検索された。
PRISMAガイドラインに基づいて、HPVの罹患率は、一般集団および不妊症クリニックの出席者のそれぞれで推定され、異種性試験は、コクランのQおよびI 2統計を用いて行われた。
HPV陽性と男性不妊症との関連性は、症例対照研究のメタアナリシスによって評価した。
結果
5194人の男性を含む合計31の適格試験が含まれていた。
精液中のHPV DNAの全般的有病率は、一般集団(n = 2122)において11.4%(95%CI = 7.8-15.0%)であり、受精クリニック出席者では20.4%(95%CI = 16.2-24.6%)であった(n = 3072)。
高リスク型の有病率は、それぞれ10.0%(95%CI = 5.9-14.0%)および15.5%(95%CI = 11.4-19.7%)であった。
HPV16は最も一般的なタイプで、一般集団で4.8%(95%CI = 1.7-7.8%)、受精クリニック参加者で6.0%(95%CI = 3.8-8.2%)の有病率であった。
精液中のHPV陽性の男性(OR = 2.93,95%CI = 2.03-4.24)で不妊症リスクが有意に高かった。
結論
精液性HPV感染は世界中で共通して起こり、男性不妊症の危険につながる可能性があります。
問題の定式化 PECOを立てる
- P: 男性
- E: HPV感染あり
- C: HPV感染なし
- O: 男性不妊症のリスク上昇
メタ解析の4つのバイアスについてチェック
- 評価者のバイアスは?(複数の研究者が独立して文献を評価しているか?) ➡ 独立して評価している
- 出版のバイアスは?(ファンネル プロットの検討) ➡ ヨーロッパの研究がほとんど。 英語で書かれた論文のみが含まれており、バイアスを排除できていないと明記有り。ただし、本文中に「Egger’sおよびBeggのテストでは、有意な出版バイアスは示されなかった( それぞれP = 0.808および0.734)。」とも記載あり。
- 元論文のバイアスは?(ランダム化比較試験[RCT]のメタ分析か?) ➡ RCTのメタ分析ではない。ケースコントロール研究によるリスク増加の検討である。(有病率は横断試験にて。)
- 異質性バイアスは?(研究結果は一貫性があるか?) ➡ フォレストプロットを見る限り結果のばらつきはない。不均一性試験の結果(Q = 1.63、P = 0.653、I 2 = 0.00%)
フォレスト プロットの確認
- I²統計量=0%(0~40%:重要でない異質性、30~60%:中程度の異質性、50~90%:大きな異質性、75~100%:高度の異質性)
- p値は0.05より小さくないか? ➡ p=0.653
感想・考察
詳しくは原著をお読みいただきたいと思います。
ひとまず有病率を見た結果として、「HPVが精液中にいる男性に関して男性不妊症の割合が高いようだ」ということがわかりました。
しかし「HPV感染によって男性不妊症のリスクが高まる」という因果関係のエビデンスについては、少し注意が必要かもしれません。
4つのケースコントロール研究(しかもすべてイタリアでの研究である)での結果で結論を出しているので、エビデンスレベルとしては高くないと思われます。
・・・というように考えてみましたが、考え方が違っていたらコメント欄でご指摘いただきたいと思います。
ちなみに、HPVワクチンについては将来的にはやはり男性も接種が望ましくなるのでしょうか?今回の論文結果だけでは何とも言えないので今後もこのテーマで論文を複数読んでみたいと思います。