のどが痛いときにステロイドを服用すると早く治りますか?

のどが痛いニャー!

私的背景

昨日に引き続き、のどが痛いときの話です。のどが痛くて辛いときに処方される薬によって回復は早まるのか?

これは非常に身近な事柄でもあるので嫌でも気になります。

妻は抗生物質が処方されても回復が早まるのはエビデンス的にはちょっとだけっぽいよ、という事に「そうなんや。それって大事な話ですね。何も知らなければとりあえず処方してよ!と言いたくなるものですから。」との反応を示してくれました。

こうした情報を多くの人に知ってもらえると良いですね。ところで、けいしゅけさん。ステロイドって炎症を強力に抑えるんですよね?のどが痛くて声も枯れているので飲んだら早く治るのかなぁ?と思ったんですけど・・・。何か知ってますか?

 

・・・知りません。

 

調べることにします。

カンタンですが、PECOを立てておき、妻のクリニカルクエスチョンをまとめます。もはや僕のクリニカルクエスチョンに置き換わってますが。

  • P: のどが痛くなった患者
  • E: 経口ステロイドを服用する
  • C: 経口ステロイドを服用しない
  • O:  のどの痛みが治るのは早まるのか?

こういったところでしょう。

では論文をさがしていきます!

■目次

論文タイトル:Corticosteroids for treatment of sore throat: systematic review and meta-analysis of randomised trials.

BMJ. 2017 Sep 20;358:j3887. doi: 10.1136/bmj.j3887.

Sadeghirad B、et.al

PMID: 28931508  PMCID: PMC5605780

Objective To estimate the benefits and harms of using corticosteroids as an adjunct treatment for sore throat.

Design Systematic review and meta-analysis of randomised control trials.

Data sources Medline, Embase, Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL), trial registries up to May 2017, reference lists of eligible trials, related reviews.

Study selection Randomised controlled trials of the addition of corticosteroids to standard clinical care for patients aged 5 or older in emergency department and primary care settings with clinical signs of acute tonsillitis, pharyngitis, or the clinical syndrome of sore throat. Trials were included irrespective of language or publication status.

Review methods Reviewers identified studies, extracted data, and assessed the quality of the evidence, independently and in duplicate. A parallel guideline committee (BMJ Rapid Recommendation) provided input on the design and interpretation of the systematic review, including the selection of outcomes important to patients. Random effects model was used for meta-analyses. Quality of evidence was assessed with the GRADE approach.

Results 10 eligible trials enrolled 1426 individuals. Patients who received single low dose corticosteroids (the most common intervention was oral dexamethasone with a maximum dose of 10 mg) were twice as likely to experience pain relief after 24 hours (relative risk 2.2, 95% confidence interval 1.2 to 4.3; risk difference 12.4%; moderate quality evidence) and 1.5 times more likely to have no pain at 48 hours (1.5, 1.3 to 1.8; risk difference 18.3%; high quality). The mean time to onset of pain relief in patients treated with corticosteroids was 4.8 hours earlier (95% confidence interval -1.9 to -7.8; moderate quality) and the mean time to complete resolution of pain was 11.1 hours earlier (-0.4 to -21.8; low quality) than in those treated with placebo. The absolute pain reduction at 24 hours (visual analogue scale 0-10) was greater in patients treated with corticosteroids (mean difference 1.3, 95% confidence interval 0.7 to 1.9; moderate quality). Nine of the 10 trials sought information regarding adverse events. Six studies reported no adverse effects, and three studies reported few adverse events, which were mostly complications related to disease, with a similar incidence in both groups.

Conclusion Single low dose corticosteroids can provide pain relief in patients with sore throat, with no increase in serious adverse effects. Included trials did not assess the potential risks of larger cumulative doses in patients with recurrent episodes of acute sore throat.

引用元URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28931508

ざっくりと訳していきます。(参考程度に。原文を読むのがニュアンスなどの齟齬が無いのであくまで参考までに)

 

目的

のどの痛みの付加的な治療としてコルチコイドステロイドを使用することによる有益性と有害性を評価するため

 

試験デザイン 

ランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびメタ分析

 

データソース

2017年5月までのトライアルレジストリ、適格試験、関連レビューの参照リスト。(Medline、Embase、Cochrane Controlled Trialsの登録簿)

 

研究選択

急性扁桃炎、咽頭炎、または咽頭痛症候群の臨床徴候を有する救急部およびプライマリケア施設における5歳以上の患者のための標準的な臨床的ケアへのコルチコステロイドの追加のランダム化比較試験。トライアルは、言語や出版状況にかかわらず含まれてた。

 

レビュー方法

レビュー担当者は、研究を特定し、データを抽出し、証拠の質を独立して、そして重複して評価した。

平行ガイドライン委員会(BMJ Rapid Recommendation)は、患者にとって重要な成果の選択を含む体系的レビューの設計と解釈につ​​いてのインプットを提供した。

ランダム効果モデルをメタアナリシスに使用した。

証拠の質は、GRADEアプローチで評価された。

6件の研究で副作用は報告されておらず、3件の研究ではほとんどないと報告された(報告例のほとんどは疾患に関連する合併症であり、両群で同様の発生率であると報告された)。

 

結果

10件の適格試験で1426人が登録された。

最も低用量のコルチコステロイドを受けた患者(最も一般的な介入は、最大用量10mgの経口デキサメタゾンであった)は、
24時間後に疼痛緩和を経験する確率が2倍であった(相対リスク 2.2 , 95%信頼区間 1.2 ~ 4.3 ;リスク差 12.4%;moderate quality evidence)

そして、48時間で痛みがない可能性が1.5倍高くなる(RR 1.5, 95%CI 1.3 ~ 1.8 ; リスクの差 18.3% ;high quality evidence)であった。

コルチコステロイドで治療した患者の疼痛緩和の発症までの平均時間はプラセボで治療した患者より4.8時間早かった(95%信頼区間 -1.9 〜 -7.8;moderate quality evidence evidence)

そして痛みの完全解消の平均時間は、プラセボで治療した患者より11.1時間早かった(95%信頼区間 -0.4 〜 -21.8 ;low quality evidence)。

コルチコステロイドで治療された患者では、24時間での絶対的な痛みの減少(視覚的アナログスケール0〜10)は大きかった(平均差1.3,95%信頼区間0.7〜1.9;moderate quality evidence)。

10件の試験のうち9件が有害事象に関する情報を求めた。

結論

単回投与の低用量コルチコステロイドは、深刻な副作用を増加させることなく、咽頭痛の患者に疼痛緩和をもたらすことができる。

含まれている試験では、急性咽喉の再発性エピソードを有する患者におけるより大きな累積投与量の潜在的リスクは評価されなかった。

 

問題の定式化 論文のPECOを立てる

  • P: のどの痛みを訴える患者
  • E: 単回投与の低用量コルチコイドステロイド投与
  • C: プラセボ
  • O:  痛みの回復までの時間

メタ解析の4つのバイアスについてチェック

  1. 評価者のバイアスは?(複数の研究者が独立して文献を評価しているか?) ➡ 独立して文献を評価している
  2. 出版のバイアスは?(ファンネル プロットの検討) ➡  検討されて要るっぽい記述有り
  3. 元論文のバイアスは?(ランダム化比較試験[RCT]のメタ分析か?) ➡ ランダム化比較試験[RCT]のメタ分析である
  4. 異質性バイアスは?(研究結果は一貫性があるか?) ➡ I²の数値を見る限りはバラツキはある。

フォレスト プロットの確認

  • I²統計量=22.8%(0~40%:重要でない異質性、30~60%:中程度の異質性、50~90%:大きな異質性、75~100%:高度の異質性)
  • p値は0.05より小さくないか? ➡ P=0.274

Appendix 3 に記述有り

感想・考察

ひとまず、単発ないし2回程度のステロイド投与が疼痛緩和に有効であろうことが示されています。

副作用リスクが低いようですし、のどが痛いときの抗生物質の処方で回復は早まりますか?で示したように抗生物質を処方されて飲むメリットは微妙っぽかったので、負担金額を考えるとステロイドの単発投与は一つの選択肢として「あり」なんとちゃうかなぁと個人的には思ってしまいました。

ただし、論文を読んで論文に対して近視眼的になっていやしないかと思い、1日置いて、少し視点を引いてみて考察を加えようと思います。

ステロイド処方がのどの痛みに対する治療薬の1つとして選択肢になり得るのはまぁ、アリ。これは変わらないです。

けどね・・・。ステロイドいっときゃいいんでしょ?って安易な処方が増えたらそれはそれで問題になりそう。

【原則禁忌(次の患者には投与しないことを原則とするが,特に必要とする場合には慎重に投与すること)】

1.有効な抗菌剤の存在しない感染症,全身の真菌症の患者[免疫機能抑制作用により,症状が増悪することがある。]

2.消化性潰瘍の患者[肉芽組織増殖抑制作用により,潰瘍治癒(組織修復)が障害されることがある。]

3.精神病の患者[大脳辺縁系の神経伝達物質に影響を与え,症状が増悪することがある。]

4.結核性疾患の患者[免疫機能抑制作用により,症状が増悪することがある。]

5.単純疱疹性角膜炎の患者[免疫機能抑制作用により,症状が増悪することがある。]

6. 後嚢白内障の患者[症状が増悪することがある。]

7.緑内障の患者[眼圧の亢進により,緑内障が増悪することがある。]

8.高血圧症の患者[電解質代謝作用により,高血圧症が増悪することがある。]

9.電解質異常のある患者[電解質代謝作用により,電解質異常が増悪することがある。]

10.血栓症の患者[血液凝固促進作用により,症状が増悪することがある。]

11.最近行った内臓の手術創のある患者[創傷治癒(組織修復)が障害されることがある。]

12.急性心筋梗塞を起こした患者[心破裂を起こしたとの報告がある。]

プレドニン錠 添付文書より引用

まず、このステロイド禁忌患者の多さ。

のどの痛みを緩和できるというアウトカムは大事だし、患者さんの要望は強くあるだろうと思います。

けど注意すべきポイントはざっくり見るだけでこれだけある。ここをクリアできるのか?ですよね。

 

・・・微妙じゃね?

 

ということで、「喉が痛いときのステロイドは効果がありますか?」は「効果はあるけど、ステロイドが飲める対象者であるかどうかの診察がメッチャ大事で慎重にならないといけない。よって・・・あんまり処方されることは無かろうと思われる!」

ってところでしょうか。

まぁ、実際に処方を目にすることもあるかもしれないので、その時には禁忌事項に当てはまってないか?はしっかりチェックしなきゃと思ったのでした。

 

まだまだ喉の痛みや「カゼ」に関する論文を読み足りないので、冬場ですし読んでいこうかなぁと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください